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住宅復旧相談センター」でボランティア

 

南 澤 大 六
(芦屋市)

 

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突如、大激動に何事かとハネ起きるや、次は上下に突き上げるような大音響と大振動、着替えもそこそこに、厳寒の真の闇の中を隣接する公園へ出ると、既に近所の方々も大勢避難されていて、漸く暁暗の中で顔を見合せ、無事を喜び合い、激しさの状況を話し合っていました。ちょうどこの時、近所で火災があり消防の早期出動で一戸で鎮火したものの、一人住まいの老人が焼死されたとのこと、お気の毒なことでした。
徐々に夜明けが進むにつれ、近所の家々の屋根瓦や外壁の剥落が目に付くようになり、思わず我が家を振返り、一見無事な様子にホッとした次第です。
やや落ちついた頃、愚妻が足が痛いと、見ると左のふくらはぎがお碗大に黒く膨れているので、先ずは医者へと車でJR芦屋駅前へと行く途中、倒壊家屋で道は塞がれ、昨日まで見慣れた街の様相は一変し、唯々驚愕した次第です。傷は打撲で約5カ月で直りました。
水道、ガス等のライフラインの破断のため、約1カ月後に大阪まで車で2時間もかけて入浴し、水やガス、電気の有難さを痛感しました。電気の復旧が早くて、炊事や暖房とも凌ぐことができて助かりました。その間にも全国各地からの復旧工事の来援、自衛隊の活躍等、又何かの手助けでもと駆けつけた多くのボランティアの若い人達に、人の心の温かさ、思いやり、積極的な行動力に内外の人々の人間愛を感じた次第です。 やがて、そうこうする内に、兵庫県が「住宅復旧相談センター」を開設の為、ボランティアの建築士の経験を生かす機会到来と、2月13日の初日から勤めました。民間の建築事務所から毎日交替で応援の人と併せて5,6人の勤務でした。
被災者は連日引きも切らず来訪され、持参の写真や資料を参考にし当方からも質問や聞き取りなどしながら、応急措置、修繕の方法や進め方、補強の仕方等を略図を書きながら判りやすく説明しました。
また全壊や修理不能の状態の人達の資金調達の問題、賃貸借関係の入居者と家主双方の民事問題、敷地の建ぺい率、前面道路幅の不足による再建不能等建築基準法の制約の問題隣地境界のトラブル、石積擁壁の亀裂破損による崩壊防止の方法対策、区画整理法の手法とその得失を含む解説・・等々、一人が済めば次は電話での相談と昼食もそこそこに、全く目の廻るとはこの事かと思い知りました。
しかしながら、来訪者が納得し笑顔で帰られると、こちらもホッとした気持ちになりました。このような事から建築士だけでは不十分なため、金融機関や弁護士会からも応援を得、充実することができました。
約2カ月間のここでの勤務を一旦終え、芦屋市での行政相談業務に戻った次第です。
なお、1年半を経た現在の芦屋市内の様子は、広い空き地が散在する中にプレハブ住宅の見本市の如くで、昔日の芦屋のお屋敷街の佇まいは全く見ることはできません。
道路は至る所で掘り返され、幹線以外はまともに通れるのは少ないような状態です。速やかな復旧を望むものです。

 

 

 

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